7d0a274c.jpg  ショルティ/ウィーン・フィルによるショスタコーヴィチ(Dmitry Shostakovich 1906-75 ソヴィエト)の交響曲第9番変ホ長調Op.70(1945)。

 この“第九”は、ここで書いているように大いなる期待が持たれたものの、確信犯的ににショスタコがその期待を裏切り、人々が口ぐちにアッチョンプリケ!と嘆いた作品だ。

 私はこの曲の演奏(録音)をいろいろ聴いてきたが、このショルティの演奏はかなりのお気に。

 とにかく痛快だ。
 少なからずの演奏が、必要以上に室内楽的に仕上げようとしたり、過度に深刻な表情を打ちだそうとするが、ショルティの演奏は「なに、しみったれてんだよ!どんまい、どんまい!」とばかり。そして、ほんとうにドンマイしちゃって起死回生の逆転ホームランを打ってくれる。
 とにかく新鮮なのだ。
 「こんな曲のはずじゃなかったのに」と唖然とし困惑する御来賓の方々を尻目に、やんちゃしちゃおうっていうショスタコの狙いがあったとしたら、こういう演奏こそが的を得ていると言えるのではないか?

 芝居がかって退屈にさせられることが多い緩徐楽章も、音楽が生き生きとしているし、第3楽章の暴れ馬のようなスピードの速さと躍動感にもスッキリさせられる。
  かといってノーテンキなのではなく、がっちりしたショルティらしい筋肉質な演奏(ネゼ=セガンのブル8を聴いた後だと、こっちの方がパワフルで、ありゃぁ~と思ってしまう)。
 コンパクトなこの交響曲のスケールが、ムクムクとひと回り大きくなった感じだ。
 1990年のライヴだが、聴衆のブラボーの叫びにも納得がいく。
 そしてまた、ライブとは思えない完璧な演奏と音の良さである。