9d4202cc.jpg  例えば黒ひげという言葉を耳にすると、あなたは何を連想するだろう?“危機一髪!”?
 私は直接的ではないが、ブラックニッカのオッサンを思い浮かべてしまう。

 では、赤ひげ?
 薬局だって?あの男女精力剤専門店と称している全国チェーンの薬局……。私はすすきのにあるこの店に足を踏み入れたことはないが、想起する気持ちはわかる。
 この店に行って、「新今治水ください」って言ったら、売ってくれるんだろうか?いや、置いてあるんだろうか?

 白ひげ。
 もうすぐサンタさんの季節だが、アニメ「ONE PIECEの登場人物」に白ひげという人がいるらしい。

 で、青ひげ。

 バルトーク(Bartok Bela 1881-1945 ハンガリー)の歌劇「青ひげ公の城(Duke Bluebeard's castle)」Op.11,Sz.48(1911/改訂'12,'18)。バルトークが残した唯一のオペラである。

 バラージュ.Bの台本による1幕のオペラ。歌手は青ひげ公とユディットの2人。

 物語の原形はペローの童話集「マ・メール・ロア」の中の物語。
 しかし、バラージュはペローのものではなく、メーテルリンクの戯曲「アリアーヌと青髭」の方を用いて台本を作った。

 河出文庫の澁澤龍彦訳の「長靴をはいた猫」(タイトルはこうなっているが、ペローの「マ・メール・ロア」である。それにしても、まったくもって、片山健氏の挿絵がすばらしい)に収められている「青髯」では、留守中に開かずの扉の中の秘密を知った妻を殺そうとした青ひげ公が、駆けつけた妻の兄たちに殺されるという3b4b8f51.jpg 終わり方になっている(グリム童話の「青ひげ」も同じ内容となっている)。
 一方、メーテルリンクの物語では、秘密を知ってしまった妻を青ひげ公が説得するが失敗し、自分は城から出て行く。

 オペラは、プロローグのあと、ユディットが青ひげ公の城に到着するところから始まる。
 城の中には7つ大きな扉があった。ユディットは全部見たいとせがむ。
 見せたがらない青ひげ公。しかしユディットが第1の扉を叩くと、中からため息が聞こえる。
 そして、ユディットに鍵を渡す。

3d23630f.jpg  ペローの作と違うのは、ユディットが隠れて部屋を開けてみるのではなく、青ひげがその場にいて順に次の扉の鍵を渡すところである。

 その7つの扉の向こう側にある部屋というのは、拷問部屋、武器庫、宝物部屋、秘密の楽園、青ひげの領土、涙の湖、そして第7の扉を開けるとそこには青ひげの前の3人の妻たちがいる。
 ユディットは4人目の妻としてほかの3人とともに扉の中に消え、青ひげ公だけが残される。

 このようにオペラでは、青ひげ公はこの新しい妻からも完全な愛を得ることはできず、孤独に置き去られる、という筋書になっている。

 「青ひげ公の城」を作曲したころのバルトークは、R.シュトラウスやリストなどからの強い影響による作風から脱したところだった。民謡の要素を用いた作風になったが、それが他の国の言葉に置き換えにくくなり、広く舞台に取り上げるには障害となったという。
 しかし、バルトークらしさが現われはじめた時期の、最大規模の作品なのであり、もうすでにバルトーク臭がプンプンとしている。

 ケルテス指揮ロンドン交響楽団、ベリー(バリトン)、ルートヴィヒ(メゾソプラノ)の演奏を。
 1965録音。デッカ。

 童話では、青いひげというのはみっともないものだというふうに書かれている。

 みっともないといえば、ぶしょうひげもみっともない。
 武将が生やしているひげじゃなく、無精なひげのことだ。
 どーでもいいですね、そんなこと。
 でも、やっぱり、青光りはいやですよね?←何が?