ca995f5f.jpg  マゼール/フィルハーモニア管によるマーラー(Gustav Mahler 1860-1911 オーストリア)の交響曲第3番ニ短調(1893-96/改訂1902)。

 なんかパピッとしないなぁと思いつつ聴き進むと、モウセンゴケに捕えられた小虫のようにその世界から逃れられなくなり、最後は深い感動に包まれちゃうっていう不思議触感演奏である。感動に包まれるのだから、消化液で干からびる小虫とはまったく違う結末を、私は迎えられるわけだ。

 第1楽章はテンポが遅い。遅いだけじゃなく、なんかかったるそうに進んでいく。やる気のない高校生が体育祭の入場行進の練習をしているかのようだ。
 小太鼓だって片手間でやってんのか?と思うような演奏だが、聴きかえすうちにこの奏者に会ってみたくなってくる。
 全体を通じ、なんじゃこりゃっていうキワモノでも俗物でもないが微妙にワルで、よくわからないがさすがマゼールと妙に納得してしまう。俗っぽさの表現がうまいのかな?

 第2~3楽章も普通なようで、どこか違う空気が発散されている。何がどうとははっきり言えないのだけど。
 第4楽章は、うぉぉぉ~、暗い!重い!怖い!という、こんな牛丼屋なら流行りっこなしというものだが、この楽章の演奏としてはぴったりマッチ。あぁ、カオスだねぇ~。
 第5楽章も変に小ぎれいじゃなくて、ニセ天使がやって来たって感じ。人格者の神父が、実は裏の顔はエロ神父だったんです。そんな、ときおりありがちな衝撃の事実を感じさせる。人間だもの……

 終楽章はすごい。
 ゆっくりと進むだけじゃなく、ときに発作が起こったようにひっどくパワフル、またあるときはかなり情感豊か。個人的にはゾクゾクさせていただけるもの。

0cadca58.jpg  第2交響曲ではちょいといただけなかったマゼールの調理も、この第3番では通り一遍ではないおいしさを提供してくれている。
 これまで私が聴いた少なからずのマラ3の演奏とは、ちょいとテイストが違う奇演的名演だ。

 メゾソプラノ独唱はコノリー。合唱はフィルハーモニア・ヴォイセズとティフィン少年合唱団。
 2011年ライヴ。signum。

 先日自宅に帰ったときに、庭の一角、ではなく、中心付近にネズミの薬を置いてきた。
 買った薬は殺鼠剤だと思い込んでいたが、実際に手にし、レジに行き、お金を払い、家に持ち帰ったのは忌避剤だった。あらためてパッケージを見てわかったのだが、こういうときでも殺しはなるべく避けようという私の優しさが無意識のうちに表れたとしか言いようがない。

 だからとにかく、来るな!ネズミよ!

 今日は昼から東京に出張である。風がやたら強く吹いているが……