多くの人(*注)が痛切に感じていること。それは土曜日ならびに日曜日はなぜこんなに速く過ぎ去ってしまうのだろう、ということだろう。
* 土日に勤労している人は除きます。
そんなわけで月曜日である。
そして私は、先週に引き続き東京に出張である。今回は3泊するのでかばんが臨月状態である。
出張といえば本を携えねばならない。
浅田次郎の「中原の虹」をすべて読み終えたが、第4巻の最後の方を先週の出張の行きの飛行機の中で読んでいたら、別れ別れになっていた春児と兄の春雷との再会、さらには春雷と妹の玲玲との再会の場面になって、私の涙腺は許可なく開いてしまい、そこから心の汗が流れ出て、隣の席2つに座っていた若い前途洋洋かどうか知らないカップルに、「やぁねぇ、あのおじさん。ハーネクイン読んで泣いてるわよ」なんてあらぬ疑いをかけられては困ると思い、とにかく難儀した。
そんな私が「中原の虹」の次に読み始めたのが、同じく浅田次郎の「プリズンホテル 1 夏」(集英社文庫)である。冬だっつーのに「夏」である。
極道小説で売れっ子になった作家・木戸孝之介は驚いた。たった一人の身内で、ヤクザの大親分でもある叔父の仲蔵が温泉リゾートホテルのオーナーになったというのだ。招待されたそのホテルはなんと任侠団体専用。人はそれを「プリズンホテル」と呼ぶ―。熱血ホテルマン、天才シェフ、心中志願の一家……不思議な宿につどう奇妙な人々がくりひろげる、笑いと涙のスペシャル・ツアーへようこそ。
ってなもので、「蒼穹の昴」や「中原の虹」とはまったく方向性が違う作品。浅田がもともと得意とするところでもある。
にしても、ヤクザのホテルなんて冗談じゃない。絶対迷い込みたくないな。 ということでモーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart 1756-91 オーストリア)の「音楽の冗談(Ein Musikalischer Spass)」K.522(1787)。
室内楽曲(六重奏曲)に位置づけられたり、ディヴェルティメントに分類されたりするが、編成は2ホルン、ヴァイオリン2部、ヴィオラ、コントラバスである。
実はモーツァルトの生誕100年の記念にこの曲の楽譜が出版された際に、そしてそのあともこの曲は「村の音楽師(Dorfmusikanten)」とか「農夫の交響曲(Bauernsinfonie)」、あるいは村の音楽師の六重奏(Dorfmisikanten-Sextett)」という名がつけられ、今でもそう呼ばれることがある。
しかし、その名の由来に根拠はなく、特に六重奏曲という点については、ヴァイオリンとヴィオラの奏者が各1名という指定はない。
冗談音楽の元祖的存在で、「作曲家別名曲解説ライブラリー13 モーツァルトⅠ」(音楽之友社)では、以下のように説明されている(この箇所の執筆者は海老澤敏氏)。
メヌエット、および緩徐楽章を含む4楽章からなっていて、いずれの楽章にも音楽的なあやまりや拙劣さがたくみに用いられ、作品の諧謔味を強めている。このようなことからモーツァルトが狙ったのは満足に演奏もできないような素人オーケストラ-1778年にザルツブルクでチェルニン伯によって設立された素人管弦楽団で、モーツァルトもその演奏に立ち会ったことがあるという-を皮肉ることでもあったともいわれているが、いっそう適切な解釈はアーベルトのように、何も知らないくせに交響曲の作曲ができるとうぬぼれている自称作曲家に対する揶揄嘲笑を音化しているとすることであろう。
2本のホルンと弦楽を用いる交響曲、あるいはディヴェルティメントの形態をとりながら、作品内部の緊密な構成に対する無能力をあらわにしているばかりでなく、それに全然気がついていないというまったくどうしようもないような作曲家の面影が各楽章で生き生きと描かれているわけである。それぞれの楽章の構成をみても、なんら有機的に関連性のない楽想をただたんに並べているばかりであり、しかも4つの楽章がひとつの作品としての統一を破るような規模をもっている。このみごとなパロディにおいて、とくにめだった理論上の誤りの効果的な使用は、5度の平行やメヌエットでのホルンの不協和音、アダージョ冒頭でのあやまった音、あるいは自己の存在を強調しようとしている奇妙なヴァイオリンのカデンツァ、そしてフィナーレのフーガやびっくりさせるような終止等である。
ラルキブデッリの演奏で。
真面目くさった面持ちの演奏で、見事にやらかしてくれる。
1990録音。ソニークラシカル(原盤VIVARTE)。
新館入口(2014.6.22~)
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