3b264834.jpg  昨日、ユダヤ人作曲家だったシェーンベルクを取り上げたが、ご存じのとおり、マーラーもユダヤ人であり、そしてまた改宗している。
 カトリック教に、である。
 しかし、そのためにマーラーはユダヤ教もカトリック教も信仰することができなくなったらしい。私に似ている。中途半端な境遇は……

 バーンスタインがイスラエル・フィルを指揮したマーラー(Gustav Mahler 1860-1911 オーストリア)の「大地の歌(Das Lied von der Erde)」(1908-09)。

 音がざらつき気味で録音が良いとは言えないが、その音質にはどこかレトロな感じの懐かしい雰囲気が漂っている。

 演奏は熱い!
 同じ熱さでも今の時代の熱演とはまたちょっと違った空気を感じる。イスラエル・フィルが必死になっているということもあるんだろうが、オーケストラの曲に対する共感のようなものが伝わってくる。こういう演奏好きだなぁ。

 イスラエル・フィルは1936年にデル・アヴィヴで創設されたオーケストラ。当初の名はパレスチナ交響楽団で、1948年のイスラエル共和国の建国をきっかけに改称された。バーンスタインは'47年にこのオーケストラの舞台に立って以降、亡くなる'90年まで密接な関係にあった。バーンスタインはイスラエル・フィルの桂冠指揮者だった。
 またバーンスタインは、アメリカのマサチューセッツ州生まれだが、ウクライナ系ユダヤ人移民の2世である。

 バーンスタインの「大地の歌」では、独唱にテノールとバリトンを用いたウィーン・フィルとの録音(1966)が有名であり、私も優れた演奏だと思うが、あまり陽の目を見ていないこちらの録音も捨てがたい。独唱はルートヴィヒのメゾソプラノとコロのテノール。

 「マーラーの交響曲」(講談社現代新書)のなかで指揮者の金聖響は書いている。

 指揮者のレナード・バーンスタインが、イスラエル・フィルハーモニーを指揮して『大地の歌』を演奏したとき、メゾソプラノ歌手のクリスタ・ルートヴィヒがあまりに速いテンポに付いていけず、リハーサルのときに「歌詞がちゃんとうたえない」と訴えたそうです。するとバーンスタインは、「歌詞なんか誰も聴いてないから、すっ飛ばしていいよ」と、平然といってのけたといいます。

 この文章にある演奏はDVDで出ており、今日紹介しているCDと同じ1972年5月のもの。演奏メンバーも同じ。となると、同一の演奏と考えるのが妥当だろうが、CDはソニークラシカル(旧コロムビア)、DVDの方はグラモフォンから出ている。

 ただ、第4楽章はけっこう速い箇所があるが、それ以外に意表をついた高速度のところはない。
 また録音が良くないと書いたが、多くの場合は背景に埋まってしまう音が拾われていたりして、新たなゾクゾクを感じることもできる。
 そしてバーンスタインの「大地の歌」で2つを比較すると、私としては総合的に判断して66年の録音より、こちらの方により感情移入しちゃう。