fb878c8e.jpg  何かに感心したりしたときに「へぇ~っ!」とか「はーぁッ!」と思わず声を出すことがある。
 老人の中にはキセルをふかしながら文化遺残的に膝をポンと叩く可能性も否定できない。

 が、「えへ~っ!」と発することはないだろう。ちょっとしたことを茶目っ気たっぷりにごまかすときに「えへっ!」って言うことはあるだろうが、それはかわいらしい女の子だけに許される行為だ。

 石桁眞禮生(Ishiketa,Mareo 1916-96 和歌山)の「交響曲 ― 嬰ヘとハを基音とする(“Symphony” in #Fa and Do)」(1965)。

 石桁の名前は昔から知っていたが、その作品を知ったのはごく最近のことである。
 なぜ昔から知っていたかというと、20歳くらいのころに氏の著作である「楽式論」を買ったからだ。
 もちろん学校で音楽を学んでいたわけではないので、音楽鑑賞の参考書として買ったのだった。

 石桁は1950年代になって12音技法を用いるようになった。歌劇「卒塔婆小町」(1956)は12音技法を採用した日本最初のオペラだという。

 「交響曲 ―嬰へとハを基音とする」も12音技法による作品で、これは1957年に発表した「シンフォニア」を破棄して書き直したものである。
844fa065.jpg  作曲者は「第1楽章はOstinato、第2楽章はBurleske、第3楽章はChoralとIntermezzo、第4楽章はFugato、という外在律的な音空間を追求した。副題にあるように、明らかにFisとCを同時的な基音としてしている」と述べている。

 はっきり言って、美しいメロディーラインに心洗われるという作品ではない。
 ここにあるのはまぎれもなくゲンダイオンガク、ゼンエイオンガクである。
 ところどころハッとさせられるところはあるが……

 日本における西洋音楽史という意味では貴重なのは間違いない。

 小林研一郎指揮東京交響楽団によるライヴ盤が出ている。
 1989録音。フォンテック。

 ところで、私が大学で学んだ(と言っていいのかどうかは謎だが)のは能楽である。いょょょょぉ~、ポンッ」!
 いや、農学である。

 そういうわけでというわけでもなくが、今住んでいる土地にまつわる話ということもあって、遅ればせながら「銀の匙」を買った。
 映画化されて盛り上がっている(このあたりだけか?)漫画である。

 実は過去に一通りはざっと読んだのだが、あらためてじっくり(文字を飛ばさず)読んでみた。
 なかなかきちんとした内容だ。
 農業についての勉強にもなる。

 登場人物の名が、十勝管内の地名に由来しているところは地元作家だからこそのものだろう。
 にしても、私はいつも流行から1歩も2歩も遅れている。