8f780cec.jpg  実は正直に申し上げると、先週のヤマダ課長はなんとなく身体の調子が悪くて、いまひとつ精彩を欠いていた。
 もっと正直に言うと、調子が悪いのが身体のどこかというと、それはおなかだった。

 先々週の金曜日のことだったそうだ。

 ヤマダ課長は阿古屋係長と仕事帰りに焼き肉屋ではないが、肉料理自慢の居酒屋に立ち寄った。その日の私はどうしていたかというと、オーダレッドさんたちと、真の焼き肉屋に行き、窓辺どら猫合唱団の性の叫びを聞いていた。

 以下はヤマダ課長の供述である。

 レバーがあったんで、おっ、たまにいいなと思って注文したんです。
 すると卓上の炭火コンロと、皿に盛った生レバーが運ばれてきたんです。
 あまりに艶っぽかったんで、1切れ生で食べたんです。ええ、美味しかったですよ。
 私の勇敢な姿を見て、係長も真似たんです。
 係長ったら「うまい、うまい、うまいっすね。あっ、ほんとにこれうまいっす、あはははは」と、3切れも食べたんです。いえ、ワライタケじゃなくて、レバーをナマで。
 次の日でした。おなかが夢の超特急になったのは。
 そして、ずっとなんとなく調子が悪いんです。
 焼かなければならないものを生で食べた罰です。
 係長?係長もおなかを壊してるって言ってます。でも、私の3倍食べたのに、症状は私の3分の1なんです。
 不条理を感じます。係長、丈夫です。


 あらら、犯罪ですね。文句のつけ先はもちろんない。
 お店には何の落ち度もない。むしろ営業妨害と言われるかも。

 でも、食あたりならもっとひどい症状になると思う。寄生虫の心配は牛レバーなら、ゼロではないものの、あまり考えなくていいと思う。

 水曜日の夜は、ヤマダ課長の課に今年入った新入社員の歓迎会があり、私も参加した。
 そのときの課長は静かにお酒を飲んでいた(係長とは対照的に)。それなりに調子は確かに良くなかったのだ。
 しかし、昼は中華ちらしや牛すじカレーを食べて過ごしていたから、深刻なものではないだろう(この点については係長も同じだが、彼の場合は調子が悪いということ自体が思い込みなんじゃないかと、私は思いはじめている)。

 先日、むかし私が飼っていたアイヌ犬のことを書いたが、実はこの話、前にも書いている。
 そして、今日は伊福部昭(Ifukube,Akira 1914-2006 北海道)の「アイヌの叙事詩による依る対話体牧歌(Eclogues after Epos Among Ainu Races)」(1950)。
 前に書いたときも同じ展開だったわけで、繰り返しになる。
 藍川由美のソプラノ、山口恭範のティンパニによる1987年の録音のディスク。
 
 その解説には次のように書かれている。

 ……これを歌っている新進ソプラノ藍川由美は……

 20数年前は新進だったんだよな。確かに。1956年生れだそうです、彼女。

 3曲からなるが、第2曲のメロディーは映画「コタンの口笛」や「釧路湿原」にも使われている。

 果たしてヤマダ課長、今日はもう治っているのか?それはこのあと出勤して、会ってみてのお楽しみである。

 そうそう、土曜日にスーパーで“レバ刺しコンニャク”なる商品があるのを発見した。
 いや、コンニャクである。レバー由来成分は入っていない。
 が、レバーそのものという色。形も直方体ではなく、不定形。気持ち悪いほどリアル。
 「レバ刺し好きも絶賛」なんだそうだ。

 私は絶対食べたくない。
 そもそも私はレバ刺し嫌い。ゆえに、代用品も必要ない。
 だが、ヤマダ課長にプレゼントしたら喜んでもらえるかも……