3034b40e.jpg  先週、ヤマダ課長の課に入った新人の歓迎会があったということに、ちらっと触れた。
 女性の新入社員である。
 まだ18歳である。
 
 食事をしながら誰かが彼女に聞いた。

 「好きな食べ物はなぁに?」
 「カレーです」
 「へぇ~」
 「毎日でもいいんです」
 「どこか美味しいお店ある?」
 「インデアンですっ!」

 かわいいではないか!
 初々しいではないか!

 すると去年の新人、すなわち現在2年目の女子社員が言った。
 「私は天ぷらです」

 天ぷらとなると初々しいという概念からややはずれるが、和食を食べて「テンプラぁ~、スキヤキぃ~、フジヤマぁ~」と感嘆している欧米人のようで心が温まる。

 「太っちゃうって思うんですけど、昨日は天丼食べたんです。とっても美味しかったです」
 「へぇ、どこで?」
 「コンビニで買いました」

 前言をひるがえそう。初々しいではないか。
 コンビニの天丼で感動しているなんて、心が温まる。レンジで60秒経過後のように。
 そしてコンビニの天丼で胸焼けしないことを、私は羨ましく思う。

 あるいは毎日カレーを食べても胸焼けしないことに対しても、私は感心する。

 そうか!
 若さとは油に強いことなんだ!

 それにしても、彼女たちの好物がカレーとか天ぷらでよかった。
 レバ刺しとかおじやって言われたら、けっこうリアクションが難しい。
 おやじだったら良い子だと思っちゃうかもしれないけど。

 こういう話題とは関係ないが、私はこの日悪酔いしてしまった。
 どういう事情か知らないが、とにかくハイボールのウイスキーが濃かったのだ(お店の好意ととらえるべきだろうか?)。帰宅した時間は9時過ぎ。しかし、私は死ぬように眠りについてしまった。

05273e87.jpg  マーラー(Gustav Mahler 1860-1911 オーストリア)の交響曲第9番ニ長調(1909-10)。
 曲の最後にesterbendという指示がある。「死ぬように」もしくは「死に果てるように」、「死に絶えるように」という意味だ。
 が、サロネン指揮フィルハーモニア管弦楽団の演奏(2009年ライヴ)からは、そのような印象を受けない。

 それが悪いと言っているのではない。
 この演奏、大げさに叫んだり自己陶酔するようなものではない。
 マーラーの曲が持つ聖と俗のバランスがうまくとれていて、決して下品に陥らない。かといって、おすまししててつまらないというものでもない。
 
 特に私は、終楽章の開始に、なんて優しげで柔らかなのだろうと、ソフラン仕上げのタオルに頬ずりしたときのように感心してしまった。
 人によってはもうひと押し欲しいと思うかもしれないが、とてもすばらしい演奏であることは間違いない。

 signum CLASSICS。

 私もサロネンのこの演奏のように、品の良い飲み方、バランスを崩さない酔い方を心がけなければ……

 そうそう、ヤマダ課長の調子は戻ったみたいだ。