e8a91c5d.jpg  ブドウ糖(グルコース)の分子式はC6H12O6である。

 ご承知のように、C、つまり炭素を含む化合物のことを有機化合物という。

 しかし、私がウイスキーを飲むときに欠かせない炭酸水に含まれる炭酸ガス(二酸化炭素CO2)や、テントの中で練炭を焚いて暖をとるつもりが中毒になってしまう一酸化炭素(CO)、ベーキングパウダーの主成分である重曹(炭酸水素ナトリウムNaHCO3)などは、有機化合物ではなく無機化合物に分類される。このように慣習的に勝手なことをすることが、世間に化学嫌いを増やす一要因となっている可能性もある。

 そのブドウ糖を用いた検査、ブドウ糖負荷試験を火曜日に受けたわけだが、要するにおしっこに糖が混じる病気、糖尿病になりかけていないかを調べたのである。

 音楽においてはCはハである。
 C majorはハ長調であり、C minorはハ短調である。

 そんなわけで、ライリー(Terry Riley 1935-  アメリカ)の「In C」(1964)。
 このCDは前にも紹介しているが60分ほどのすべてがハ長調なんだそうだ。名前にうそ偽りはない。

 ロバート・P・モーガン編、長木誠司監訳「西洋の音楽と社会11 現代Ⅱ 世界音楽の時代」(音楽之友社:1997)には、次のような記述がある。

 わかりやすさと商品化というジレンマにたいするもうひとつの回答はミニマリズムである。それは結果的に1970、80年代の音楽におけるひとつの新しい焦点を生み出した。最も重要な作品はテリー・ライリーの《イン・C》(1964)であった。この作品では、演奏者は、一連の短い音楽の断片を反復しながら、どのように、そしてどの時点で先に進むかを選択する。《イン・C》の構造は1960年代の開かれた形式の構造に似ている。しかしながら、演奏の仕方は非常に明快で、誰にでも理解できるシンプルな楽譜は録音されたLPのジャケットに掲載されているほどである。さらに《イン・C》の耳に聞こえてくる側面は、多くの宣伝用の広告と同様、この先に何が生じるのかということがすぐわかるものである。変化のないパルス音、限定された音高素材、断片の反復、連打するドローンなどが結び付き、変化ではなく固定し、変わらぬものが示される。このような作品は、全体として大量生産商品となるわけではないが、そうした商品という面をひとつの構成要素としてとり入れているのである。《イン・C》は、ファッションや使い捨て商品に対抗するのではなく、むしろそれらを肯定しており、専門家ではなく消費者という聴衆を要求しているのである。
 
 ここでは「In C」がミニマム・ミュージック誕生の最も重要な作品と位置づけているにもかかわらず、ライリーの名前は、しかしながら井上和男編の「クラシック音楽作品名辞典」(三省堂)には載っていない。グラスやライヒは載っているのに、である。
 ライリーはクラシック音楽作品とは見なされていないのか?少なくとも井上氏はそう位置づけているのだろう。

da338a9f.jpg  ヨーロピアン・ミュージック・プロジェクトの演奏。2002録音。wergo。

 が、これを聴き終わると、クラシック音楽らしい音楽を聴きたくなるのも事実。少なくとも私はそう。
 久しぶりに in C しちゃったあと、私が手にしたのはベートーヴェンの交響曲第5番ハ短調Op.67、いわゆる「運命」のCDだった。
 今回はジンマン/チューリヒ・トーンハレ管弦楽団の演奏にした。
 落ち着くぅぅぅぅ~。
 そして、私はハ長調よりもハ短調の方が好きなのである。曲にもよるが……