3a83abb5.jpg  先日発売されたCD「伊福部昭 百年紀 Vol.1」。

 そのなかから「国鉄」組曲。

 いまの若者諸君は、もはや“国鉄”って言葉を知らない人の方が多いかもしれない。

 鉄道マニアとかなら、JRの電車が国鉄色で期間限定運転というニュースを聞くと、ウホウホ喜んじゃうってことがあるが、鉄道に関心がなくて、しかもピチピチの若い子と来た日にゃ、「クニテッショクってなぁに?」って、相対性理論について理解できないのと同じくらいキョトンとしちゃう可能性がある。しかもこう書くと、テクニシャンに似てるという新たなる発見!

 にしても、国鉄時代の列車の乗り心地ってひどかった。
 特急車両はともかく、急行や普通列車の、あの窮屈さ耐久レースを強いられているようなボックス席。客のことをなんも考えてなかった。

 昔、根室8:30発函館行のニセコ2号っていう急行があって、何度か札幌まで利用したことがあったが、札幌に着くのが18時近く。石勝線がまだ完成していなくて、根室→釧路(ここで30分ほど停車し増結。ここで駅弁を買わないと昼飯を食いそびれてしまう)→帯広→富良野→滝川→札幌という根室線と函館線経由の運転。

 向かいの人とひざがぶつからないわけがないあの狭いボックス席で、ただただ耐えるしかない。駅弁を食べている姿を知らない人の目の前にさらけ出さなきゃならないが、じっと我慢するしかない。食べたくないが、冷凍ミカンをおすそ分けされたら、過剰に感謝の意を表して受け取らざるを得ない。

 私は札幌で降りるからいいものの、そのまま小樽→倶知安→長万部→函館と終着駅まで行く人は(どれぐらいの割合でそういう人がいるのかわからないが)、着いたら立ち上がれるのが奇蹟だというくらい疲れるはずだ。
 しかも函館着は23時ころだったわけで、そこから青函連絡船に乗り継ぐ人の方が多かっただろうし……。昭和の人たちって元気だったんだなぁ。

 もっとも私の場合は、父親が一時期根室に住んでいたのでこのような経験をしたわけで、これが釧路だったなら最初っから特急おおぞらを利用しただろう。間違いなく。

 「国鉄」組曲(Japanese National Railways,suite)は、伊福部昭(Ifukube,Akira 1914-2006 北海道)が手がけた国鉄の記録映画3本から12曲を組曲化したもの。

 2014年2月に行なわれた伊福部昭百年紀実行委員会主催のコンサートで披露されたが、この日のコンサートではいくつかの映画音楽の組曲が演奏された。それらの組曲は基本的に元の映画音楽用の楽譜を忠実に再現することを念頭に置いて作ったという。

 「国鉄」組曲で音楽が使われた3本の映画とは次のとおり。

 ・ つばめを動かす人たち (1954:日映科学)
 ・ 雪にいどむ (1961:日映科学)
 ・ 国鉄~21世紀を目指して(1966:学研)

 一応補足しておくが、つばめというのは特急列車の名前。
 1964年の東海道新幹線開業まで東海道線を疾走した列車である。

 伊福部の他の映画でも使われているメロディーが満載。にしても、機関車の力強さや厳しい気候との戦いなどを表現するのに、伊福部音楽が見事にはまっているのがわかる。

 演奏をとやかく言うのはのは野暮ってもの(が、スケール感は大きくないが決して悪い演奏ではない)。
 貴重な音源をこのように聴けることに非常に大きな価値がある。

 ほら、“ゴジラだけでなく数々の特撮映画や黒澤映画の音楽も担当して日本映画の黄金期を支えた巨匠・伊福部昭による珠玉の音楽をフルオーケストラで堪能できる貴重なCD”って、↓ のタワレコのサイトにも書いてあるでしょ。

 齊藤一郎指揮オーケストラ・トリプティーク。
 2014年ライヴ。スリーシェルズ。

 “21世紀を目指した”国鉄だったが、1987年3月31日が最後の日になってしまった。

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