中学生のころに文庫本を買って読んだ作家に星新一がいた。
ショート・ショートと呼ばれる短編小説で、SF。何冊も買ったが、やがて私の好みは眉村卓に変わった。はっきり言って、当時は眉村よりも星の方がはるかに人気があったが(そして現在の評価も星新一の方がはるかに上だろう)、私は眉村作品(こちらもSFのショート・ショートが多かったが、どれもがSFというわけではなかった)の方に魅かれ、たぶん当時出ていた文庫本はほぼすべて買ったはずだ(「ねらわれた学園」とか「なぞの転校生」を買った記憶はない)。
最初に買った眉村の文庫本は「C席の客」というもので、文庫のタイトルにもなっているこの小説や、ここに収められている「ミスター・カレー」なんかはお気に入りだった。
眉村の本の多くがいまでは絶版になっているようだ。
実家に行けば、当時買い揃えた文庫本がまだあるかも知れないが、実家に近づきたくないので読む機会はなさそうだ(星新一もまた読み返してみたくなってきた)。
自分の親のことをいうのもなんだが、私の母親は、小田島滝江×小田島クメ×辻口夏枝×武井シン×橋宮香也子の積を計算し、その解の五乗根を求めたような人物なのである。
あっ、この人たちは三浦綾子の小説に出てくる女性の名であり、一癖も二癖もある、常識が欠如しているか、もともと常識がない人たちである。
で、なんで眉村卓のことを思い出したかといえば、眉カットのポスターを見かけたからにほかならない(@阪急梅田駅構内)。
そうか。10月31日はハローウィンなのか。
怖い顔だ、この姉ちゃん。
さすがプロの技ってものだ。
10月1日からやってるのもすごい。
それを林光(Hayashi,Hikaru 1931-2012 東京)が1985年に編曲したものを。
CDの解説(執筆は森泰彦氏)によると、
宮沢賢治の歌曲の多くと同様に、口承で伝えられたものを後に採譜したかたちで現存し、賢治の愛読者にもっともよく知られた愛唱歌のひとつである。賢治の文学と同じように、西洋でも日本でもないのにどちらでもあるような不思議なメロディーで、特にその独特の拍節は記譜者を悩ませている。林光はメロディーを4拍子にとり、フレーズごとに休符を挿む。旋律構成音から作られた音の薄いピアノ伴奏音形ともども、神秘性を強め、拡がりと静寂を耳に聞こえさせる編曲だ。
というものだ。
林光/東京混声合唱団、寺島隆也(p)の演奏で。
1995年ライヴ録音。フォンテック。