1人目のH
ウソじゃないんです。
いくら今日が4月1日だからといって、アタシを疑うなんて、悲しくなっちゃう。
ベルリオーズとホルスト。
この2人の作品つけられている整理番号は、ともにH.。
本当なんです。
まず、ベルリオーズ(Louis Hector Berlioz 1803-69 フランス)。
金管は咆哮するは大砲はぶっ放されるはって、これは「葬送と勝利の大交響曲」の演奏風景だろう。すっごい髪型で指揮棒を振っているのがベルリオーズである。
ベルリオーズの作品には作曲者自身によるOp.番号が付けられているのだが、おやおや、困ったことにそれが付けられていないものも少なくない。
そこで(たぶんカリフォルニア大学の)カーン・ホロマン(Kern Holoman)が作曲年順に整理番号を作った。それがH.番号である。このHはどう考えてもHolomanのイニシャルからきているのだろう。
例えば幻想交響曲Op.14にはH.48の番号が与えられている。
2人目のH
一方のホルスト(Gustav Holst 1874-1934 イギリス)。
ホルストの場合も事情はベルリオーズと一緒。つまり、Op.番号が付いている作品もあればないものもある。
それを整理したのが、ホルストの娘であり、音楽学者・指揮者・作曲家・鍵盤楽器奏者という、なかなかたいした人だったイモジェン・クレア・ホルスト(Imogen Claire Holst 1907-84)。ブリテンと一緒になって仕事もしたという。
その整理番号H.であり、このHもそう考えてもImogenのイニシャルに違いない。番号順はほぼ作曲年にそっている。
有名な組曲「惑星」Op.32のH.番号は125である。
ちなみに前回紹介したカール・フィリップ・エマヌエル・バッハの作品にもH.とついた番号がある。
威勢が良くて派手な「惑星」はいかが?
音楽作品整理番号
昔は「ヴォトケーヌ」とも
バッハ(Johann Sebastian Bach 1685-1750 ドイツ)の次男、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ(Carl Philipp Emanuel Bach 1714-88 ドイツ)は前古典派の音楽家として、交響曲や協奏曲、ソナタの様式確立に大きく貢献をした。
その彼の作品にはベルギーの音楽学者ヴォトケンヌ(Alfred Wotquenne)が1905年に作り上げた作品目録の番号、Wq.がつけられている。
ヴォトケンヌはその前年の1904年には、グルックの作品目録も出版している。こちらも作品番号はWq.である。
C.P.E.バッハの作品にはヴォトケンヌ番号のほか、H.で表記される番号もある。
こちらはアメリカの音楽学者ヘルム(Ernest Eugene Helm)が1989年に作成した番号である。
カール・フィリップ・エマヌエル・バッハの音楽の魅力はバロックのような響きとバロックにはない大胆ともいえる運動性。
近年評価が高まってきているとはいえ、もっと広く聴かれてもおかしくない作品がたくさんある。
数多い宝石のような作品の中から、今日はチェンバロ協奏曲ハ短調Wq.43-4,H.474(1771)
Allegro assai - Poco adagio - Tempo di Minuetto - Allegro assai の4つの楽章からなり、第1楽章が第4楽章で再び登場する形。
前も書いたが、この回帰が実に印象的。
美しいが影のあるメロディーが終楽章で再び姿を現すところは、街中でとても清楚だが憂いを湛えた美女を見かけ、数日後にその人を奇跡的、超偶然的に再び見かけることができた、そんなときめきめいた気持ちに襲われる。
あの半音進行がたまらない
今でも私は「五星戦隊ダイレンジャー」の歌は傑作だと思っている。
もう20年ぐらい前の放送だから、知っている人は少ないと思うけど……
ヴォー、ヴォー、ヴォオ~!って歌わなければならないのだ(カラオケで選曲してしまった場合)。
そして曲が終わったときには肩で息をするくらい疲れるのである(カラオケで歌ってしまった場合)。
ところでクラシック音楽作品の作品番号ではOp.が使われるのが一般的である。
Op.はOpusの略であり、op.という表記が使われることも多いが、私はOp.という表記の方を好む。むかし音楽之友社から毎年出版されていた「レコード総目録」がOp.表記だった影響である。
音楽作品でOp.を使用し始めた最初は、おそらくはバンキエリ(Adriano Banchieri 1568-1634 イタリア)であると考えられている。
交響曲第7番イ長調Op.92(これはベートーヴェン)というように表記するわけだが、もちろん作品番号を知らなくたって聴くことに何の障害もない。が、私がブログで曲を取り上げる場合は、きちんした方がいいという思い込みと余計な親切心から書いてしまうのである。
何らかの理由で作品番号がない場合に誰かが付けたWoO.
ところでOp.ではなくWoO.という作品番号表記がある。
ベートーヴェンの一部の作品にあるWoO.番号は Werke ohne Opuszahl(作品番号なしの作品)の略で、ベートーヴェンの場合はG.キンスキーとH.ハルムが1955年に出版した作品目録の整理番号である。
たとえば「ヘンデルの『ユダス・マカベウス』の『見よ、勇者は帰る』の主題による12の変奏曲」ト長調(1796)はWoO.45である。
WoO.番号が付された作品は他の作曲家にもある。
クレメンティやシューマンなどの一部の作品にWoO.番号が存在する。
カッコ書きは第6版の番号
ふだん当たり前のように使っているケッヘル番号について、一度整理しておきましょう。ふと、そんな気になったので……
モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart 1756-91 オーストリア)は生涯600曲以上の作品を残した。しかし、モーツァルト自身が自作の作品リストを作るようになったのは、1784年に書き上げたピアノ協奏曲第14番からである。
つまり、ピアノ協奏曲第14番以降の作品については作曲年代に関する問題があまり生じないのだが、それ以前の作品についてはいつ書かれたかという作曲年の整理がモーツァルトの死後も成されていなかった。
植物学者であり鉱物学者だったケッヘル(Ludwig Kochel 1800-77 オーストリア。原綴りではoにウムラウトが付く)がモーツァルトの年代別の作品目録を作ることを思い立ったのは1851年のこと。
そして1862年に「モーツァルトの全音楽作品の年代順主題目録」を完成。その番号=ケッヘル番号は、K.もしくはKV.の略号でモーツァルトの作品に付されることとなった。
その後、音楽学者のアルフレート・アインシュタイン(Alfred Einstein 1880-1952 ドイツ→アメリカ)をはじめとする研究者たちによる時代考証によって改訂が行なわれ、最新版のケッヘル目録は第6版(1964。ブライトコプフ・ウント・ヘルテル社)であるが、最初のケッヘル番号が定着しているため、旧ケッヘル番号のあとにカッコ書きで第6版の番号が表記されることが多い。
例) 交響曲第25番ト短調K.183(173dB) (1773作曲)
あるいは、K6.173dBと表記されることもある。
なおケッヘル目録は現在第8版が出版されているが、内容は第6版と同じである。
ケッヘル目録の最後の番号はK.626で、これは未完に終わった「レクイエム」である。
生前出版作品のOp.番号
モーツァルトの作品番号は、しかし、ケッヘル番号以外にもある。
通常の“作品番号”であるOp.(Opusの略)番号が付いた作品もわずかながらあるのである。
Op.番号をもつ作品はOp.17ぐらいまである。“ぐらい”というのも変だが、Op.番号は重複したり欠落しており、錯綜しているのである。Op.番号はモーツァルトの生前に出版された作品につけられている。
例えば、Op.1の番号は次の2曲に付いている。
・ ヴァイオリン伴奏のクラヴサン・ソナタOp.1
2曲(ハ長調K.6(1762-64頃)/ニ長調K.7(1763-64頃))
・ ヴァイオリン伴奏のクラヴサンまたはフォルテ・ピアノのためのソナタOp.1
6曲(ト長調K.301(293a)/変ホ長調K.302(293b)/ハ長調K.303(293c)/
ホ短調K.304(300c)/イ長調K.305(293d)/ニ長調K.306(300l))(1778)
初版出版以後に発見された作品の番号
K.Anh.という番号が付けられた作品もある。
例) 交響曲ト長調「旧ランバハ」K.Anh.221(45a)(1766)
K.Anh.はケッヘルの目録の初版以後に発見された作品で、作曲年代とは関係ない(第6版の番号K6.45aは、もちろん作曲年代に従っている)。
例にあげた「旧ランバハ」は1924年にランバハ修道院で発見され、一時期は父・レオポルトの作品とされたが、現在ではヴォルフガングの作品であると断定されている。
偽の作品、もしくは疑わしい作品
このほかにC.という分類がある。これは偽作または疑作に付けられる。
例) 協奏交響曲変ホ長調K.Anh.9(C14.01)(1788)
オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルンを独奏とするこの協奏交響曲は、20世紀の初めに筆写譜が発見された。この作品は1778年に作曲された後に紛失し記録上だけの存在だった「協奏交響曲K.Anh.9,K3 .297B」の編曲と考えられてきたが、ケッヘル第6版では偽作に分類されている。
ケッヘル番号のついていない曲もある。
1776年に書かれたと推定される交響曲ニ長調には、交響曲の通し番号もついていないが、ケッヘル番号もない。
セレナード第7番「ハフナー」の4つの楽章を取り出して変更を施し、4楽章の交響曲にしたものである。
ところでK.1の作品は何かというと、「メヌエット ト長調」(1761または62)で、K6.では1eとなっている。
また、第6版では1の番号を持つ作品は以下のようになっている。
アンダンテ ハ長調K6.1a
アレグロ ハ長調K6.1b
アレグロ ヘ長調K6.1c
メヌエット ヘ長調K6.1d
メヌエット ト長調K.1(K6.1e)
メヌエット ハ長調K6.1f
これらの曲を、私はGuy Pensonのクラヴィコード演奏のCDで聴いている。
モーツァルトの最初の一歩のメロディーが、微笑ましい。
1991年の録音で、レーベルはブリリアント・クラシックス。
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